日本刀の作り方の本
以前、初心者向けの入門書をご紹介しましたが、さらに「日本刀の作り方を詳しく知りたい」という方向に興味の向いた人向けの本をご紹介します。
入門書はできあがった刀を鑑賞することを主眼に置いて書かれているものが多く、全工程をさらっと紹介しているものがほとんどです。
たまにイラストか写真で各工程が行われているところを見せてくれるものもありますが、普段目にする機会のない工程はなかなかイメージしにくいですよね。
逆に、ネットで「日本刀 鍛錬」などのキーワードで動画を探すとそれなりの数が出てきますが、いちいち手を止めて解説してくれるわけではないので、何をやっているかよく分からないのが正直なところです。
ビジュアルが素晴らしい本
『日本刀 神が宿る武器』服部夏生・仲森智博・藤森武・宮田昌彦 日経BPムック(Amazon)
手に入りやすくて良いと思うのがこちらの本。何が良いかというと、写真です!写真がとにかく良い。
写真を担当されている宮田さんは私を日本刀ワールドに引っ張り込んでくださった張本人(失礼)ですが、河内親方の鍛刀現場の撮影をこの十数年ライフワークにしている写真家です。その蓄積の中からベストショットを詰め込んであるので「流行りだしたから出しました」と言う本とは一線を画しております。
同系統の本のいかにも説明用なスナップ写真でなくて、刀匠の仕事をシーンごとに切り取ったストーリー感のある写真が素晴らしい。また、文章も写真と同じく、淡々と説明するのでなくて現場を見て感じた感動が伝わってくるトーンで書かれていて、写真とのバランスが良いです。
かなり詳細な理論ベースの本
『作刀の伝統技法』鈴木卓夫 理工学社(Amazon)
こちらはちょっと手に入りにくいです。古書じゃないと無いんじゃないでしょうか。数年前に私が探した時も古書しかなくて、通販で取り寄せた記憶があります。昨今のブームで再版がかかっていたら嬉しいのですが…。
玉鋼とは何か?から拵の各部分の製作まで、文章ベースですがとにかく詳しく載っています。各工程で使われる道具の図が載っているのも嬉しいです。「なんかよくわかんない金属の棒」がいっぱい出てきますもんね…。写真がモノクロで見にくいのは技術寄りの内容だからしょうがないかなーと思いつつ。
出版社の名前からして想像がつくと思うのですが、原材料である玉鋼の製鉄方法や鍛錬によって鉄がどう変化するかなど、技術的な話にかなり寄っています。文章も理系な感じで正直ちょっと読みにくいです。
実際の製作の現場を見せてくれるというよりも、伝統的な作刀方法を現代科学の視点から解き明かすとそこで何が起きているかが分かる、という切り口の本です。
入門書の次に手に取っていただきたい「日本刀がどう作られるか」に興味がわいた人向けの本のご紹介でした。
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