展示で個人的今日のお気に入りを作る
春からの刀の展示スケジュールをチェックしていたらば、昨今のブームのおかげか各地で趣向を凝らした展示が行われることに気づいて、どこへ行けば良いのか分からなくなりつつある今日この頃です。
先日は東大阪市の石切劔箭神社で御神宝の公開がありました。規模は大きいとは言えませんが、少し並んだものの太刀・刀を始め、奉納された品物や発掘調査で出土した鏡など、じっくりとお宝を拝見できて満足した次第です。
これくらいの規模の方がいっぱい見すぎてくたびれた…という状態にならなくて済むような気もしますね、実際。
それはさておき。何十振という刀が展示される大規模な展示や、展示を見ることに慣れていない間は全部を一生懸命見ると疲れてしまいます。
上手く手を抜くではありませんが、今日はこれが個人的なツボだった、今日はこれだけ覚えて帰ろうという「今日のお気に入り」を作って、あとは忘れてもしょうがないという見方も良いのではないでしょうか。
展示を一通り見て、細かい理屈抜きにこれが気になるわーという刀を選んでみてください。展示のメインに置かれている刀でも良いですし、別の刀でも良いです。一番大事なのは、「私はこれが気になる」という点です。自分の感覚でイイナーとか気になるナーと思うもの。
気になる刀を選んだら、それがどんな形・サイズで、作者は誰でいつの時代の作品か、覚えてください。覚えられないと思う場合はメモを取るのも良いです。
見る箇所は 展示の刀の何を見る? や 刃文が見える絶景ポイントを探そう を参考に、今の自分に見える範囲で注意深く見てください。言葉でメモを取るより、ラフなスケッチの方が良いかもしれません。
下は京都国立博物館で「いやー!なにこれステキ!」と思った則国の太刀。
2回目に行った時に列の外側から単眼鏡で見ながら書いたのがこちら。「とにかく細い」とかアタマ悪いメモでお恥ずかしい。
この時は、刃文の種類が分からなくても、地鉄の種類が分からなくても別に構いません。刃文は見えた方が楽しいですが、見えにくい角度で置かれている場合はちょっとコツが要りますので、見えなくてもしょうがないです。刀を見慣れている連れが居る場合や、ガイドの方がいらっしゃる場合は「どこから見たら刃文が見えますか?」と訊いても良いと思います。
その上で、帰る道すがらでも良いので「私、なんでコレが良いと思ったのかなー?」とちょっと考えてみてください。また、作った刀工がいつの時代の人でどこに住んでいたかも調べておくと後々はかどります。
正直なところ、刀は全然興味のない人からすればみんな同じ、刀です。
興味が出てきて、アレよりコレが良いと思ったのには何か理由があるはずです。
たとえば、全体の雰囲気が格好良いと思ったから。
では、その雰囲気を作りだしているのは何なのか?形なのか?それとも刀身の地鉄の質感なのか?刃文のイメージなのか?
あんまり分析しすぎてもかえって分からなくなるのですが、別の展示の機会でまた別の刀を「コレ気になるなー」と思った時に、前のと比べてみるわけです。
そうすると、同じ作者だったり、同じ時代の刀だったり、時代が違うけど同じ地域だったり、ある刀とその写しだったり、段々と自分の好みが分かってきます。
なんとなく日本刀の展示がある!行こう!で、なんとなくいっぱい見たー!ではなく、前に見たアレと同じ作者のがあるから今度のも好きかもしれない、とちょっとワクワク感が違って来ますし、二つ似たような展示でどっちか片方しか日程的に無理だ…となった時に、展示内容で自分がより好きそうなのはどちらかアタリを付けることができるようになります。
これから展示で色々な刀を見てみようと思っている方は、「今日のお気に入り」を作る、それを少しずつ集めていく方法をお試しください。
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