刀の材料、鉄の話 その2 南蛮鉄

前回、「刀の材料、鉄の話 その1 玉鋼」で和鉄と玉鋼の話を書きました。
日本刀は日本で作られた鉄でしか作られて来なかったのか?というと答えはNoです。

記録として残っているだけでも、日本では色々な鉄を輸入していたことが分かっています。
室町時代に明から輸入されていた鉄「唐鐡」や、室町時代の終わりから江戸時代の初めにかけて南蛮貿易で西洋からもたらされた「南蛮鉄」がそうです。
南蛮鉄はひょうたん型に成型されたものが輸入されていたことから、ひょうたん鉄という名前も知られています。

この南蛮鉄、いわゆる「舶来物」としてある種のブランド品だったようです。入手できるのも、将軍家や大名、一部の大金持ちなどセレブ層だけだった模様。

そのためか、将軍家や大名家のお抱え、もしくはその時代の売れっ子刀工はそうした南蛮鉄を使って刀を作っています。
なぜ材料に南蛮鉄が使われているのが分かるかというと、銘に「以南蛮鉄」や「以阿蘭陀鍛作之」などの記述があるからです。わざわざ「材料に使ったったぞ(ドヤァ)」と言わんばかりに銘に入れるくらい、珍しくて貴重な材料だったんでしょうね。

その上で、大坂正宗と呼ばれた井上真改は南蛮鉄を使いつつ、和鉄と遜色ない作品を作ることに成功しています。こういう作品を見ると、上手い職人は未知の材料でも工夫を重ねて良い物を作り上げてしまうもんなんだなぁと思います。

江戸時代の初めの新刀の刀工にはこうした作品がちらほらと見受けられるのですが、やがて鎖国令で外国からの輸入が制限されるようになると南蛮鉄が新たに入ってこなくなったせいか、ほとんど作られなくなります。

明治以降、現代でも珍しい鉄を材料の一部に使って刀を作るという試みは続いていて、隕石に含まれる「隕鉄」を使った刀などが作られています。流星刀など、厨二病心をくすぐられる名前が付いていることが多いですね。

珍しい鉄を使った刀は、新刀以降の比較的新しい刀の展示で見ることができますので、見かけられた場合にはぜひじっくりと他の刀と比較しつつご覧になってみてください。

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