レビュー『刀剣鑑賞の基礎知識』
この本の目次は 目次紹介『刀剣鑑賞の基礎知識』 の記事でご紹介しているので、そちらをご覧ください。
『刀剣鑑賞の基礎知識』得能一男 著 刀剣春秋 宮帯出版社(Amazon)は、「はじめに」で紹介されているように、日本刀・甲冑に関する月刊新聞『刀剣春秋』での筆者の同名の連載を再編集して出版された単行本です。
刀剣春秋での連載は平成5年(1993年)から平成14年(2002年)の100回以上に渡り、ここ数年のブームをきっかけに日本刀への興味を持った人にとってはバックナンバーを集めなければ読めなかったであろう記事をまとめて読める、しかも流通の少ない古書ではなく一般の書店で新刊が買えるという、実に良いタイミングで出版された本だと言えます。
タイトルにも「基礎知識」とあり、各章立ての文言も各時代の刀剣の特徴を述べているのであろうという印象を受けるほどシンプルなため、一見初心者向けの総論的な内容かと思いきや。
読み始めると決して初心者向けでないことが分かります。
本文では、日本刀がどのような手順で作られているかの大まかな流れ、各部の名称や地鉄の種類、刃文や働きを表す各種用語、各時代によってどのような特徴を持っているかの概略など、いわゆる「初心者向け」の本で述べられている内容は既に知っているものとして話がどんどん進んで行きます。
むしろ、そうした知識を書籍なり展示なりを見て一通り吸収し、それらに対して「なぜ、そうであるのか?」という疑問を持つ段階に至った人に向けての本だと言えるでしょう。
各時代の社会的な背景、人々の価値観などを説き起こし、それらの要請に応えて製法や材料が移り変わり、刀工を始めとした職人たちが工夫を凝らした、その結果として各時代の刀がそれぞれの形で生み出され現在まで残っている、という大きな物語が語られています。
ともすると暗記モノになってしまいがちな日本刀の知識、その背後にある歴史を考えることで個々の用語についてもより深く知ることができる、そういう意味では確かに「基礎知識」であろうと思いました。
この本の想定する読者は、日本刀についての入門書などを一通り読んだ人だと思われます。ですので、読者の視点から見るとこの本は?と言いますと、最初の1冊目ではなく、2冊目・3冊目以降に読む本、としたいと思います。
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