現代刀工の作品展の面白さ

数百年を経た名刀がどーんと並ぶ展示と違って、馴染みの薄いような気がする現代刀工の作品展。
昨今のブームで大混雑するそうした展示と違って人も少ないしじっくり見られる良い機会なのですが、こちらにも目を向けていただきたいのでプッシュしてみたいと思います。

美術品なんですが…

現代刀工の作品の話をすると、すぐに「買う/買わない」の話になりがちですが、それもどうかなぁと思います。アイドマの法則を見ても分かるように、「買う/買わない」の前に「欲しい/欲しくない」がありますし、持つことがすべてだとは思わないのですよね。
そもそも販売する目的以外、純粋に展示するための現代刀工の作品展も開催されていますしね。現代アートの作家の作品展とあまり変わらないんじゃないでしょうか。

私も今の仕事をする前は数十万円〜数百万円の嗜好品を一般のお客様に販売する仕事をしていたので、経験的に「欲しくない人に売ってもしょうがないし、ちゃんと管理しないんじゃないですかネー」と思って眺めています。もちろん、いつか欲しい!と言う方はいつか持つための下見としていろんな作品を見るのは良いと思います。自分の好みを把握したり、良し悪しを見る目を養ったり、信頼のおける刀剣商の方と知り合う機会を持つのは大事だと思いますし。

作った人が目の前に

で、見るのが好きな人として現代刀工の作品展の一番楽しいポイント。それはやはり「作った人が同じ時代を生きている」ことではないかと。
これ数百年前に作られた名刀では絶対ありえないことなんですよね。既に亡くなられた人間国宝の作品…はさておき、今まさに活動している方が作った物を拝見できるのは面白いです。作り出される作品が年とともに変化していくのをリアルタイムに追いかけられるのは同じ時代に生きている人間の特権です。

例えば、会期中にトークショーがセッティングされていたり、小規模な個展の場合はご本人が来場者の方に直に作品について説明されたり。展示物について「今回はこういう試行錯誤をした」とか「過去の誰それという名工の作風に倣ってみた」など、作った本人にしかできないお話を聞くことができます。

そうしたお話を伺ってるうちにご本人のものづくりに対する姿勢とか、仕事に対する考え方とか、ビシバシ刺さるものがあると作品だけでなくて作者にも心酔しちゃったりするんですけど(笑)。
やっぱり百年先、二百年先に残る物を作る人の仕事に対する思いって、すごいです。「プロフェッショナル 仕事の流儀」か!っていうくらいあてられます。これから独立する若手の刀工さんと喋っててもそう思います。特に、作る仕事を職業にしている方は「私も頑張ろ!」って元気になれるんじゃないでしょうか。

初めてでも入りやすい作品展

あちこちで作品展が開催されている中で、初めての人でもふらりと入れるのが全日本刀匠会主催の「お守り刀展覧会」です。
これは「お守り刀」をテーマに刀身と拵を製作する作品展で、一種のコンクールになっています。「市民審査賞」という枠が設けられていて、自分はどの作品に投票するかなぁと考えながら会場をグルグル回るわけです。
日本刀について全く知らない人にも気軽に楽しんでもらえるように、会場の掲示物や流されている映像は一般の方向けの分かりやすいものになっています。

出品作品の多くは短刀ですが、作品ごとにそれぞれのコンセプトがあって、刀身の形も彫りもみんな違っててじっくり見比べられますよ。大御所よりも中堅・若手の方が多く出されているようですし、ここで「あ、この作品好きだなー」と思った作者の名前を控えておいて、その方が出品する作品展をチェックする最初の足がかりとしても良いと思います。
この作品展は全国の都市を巡回するので、近くに巡回して来た時はぜひご覧ください。

開催情報はどこで知る?

現代刀工の作品展に行ってみたい、いつどこで開催されているか知りたい、と思った時はこのあたりを探していただければ。

  • 全日本刀匠会のサイト
  • 刀匠や一門のウェブサイト、ブログ・SNS
  • 博物館・美術館のサイトなど
  • 刀剣雑誌の催し欄

こんなところでしょうか。
最近はウェブで情報発信されている方も珍しくないので、お住まいの地域で活動している刀匠を見つけるのはそう難しくないはずです。
もちろん昔ながらの案内状をいただくこともあります。会場で芳名帳に記帳してお願いすると次から案内状を送ってくださるんですよね。こうした案内状や招待状は会場に行くまでにワクワクするのでやっぱり良いですね。

日本刀の謎 近畿で活躍する刀匠たち

刀匠 河内国平展

左が送っていただいた招待状。一枚で二名入館できるので友達と三人で行くのに二枚送っていただいたところ、友達の方でも同じことを考えてて現地で集まったら三人に対してハガキが四枚…!しかも二人とも同じ刀匠さんから送っていただいていたと分かり、それを報告したところ「えー、二人って知り合いだったの!?」と驚かれたオチまでついたハガキです。
右がNHKの「美の壺」でも紹介された正宗賞受賞の太刀「春暁」のお披露目を兼ねた展示会の案内状です。中を開くと押形が載っています。見に行った後でも記念に取っておきたくなる案内状です。

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